旧版『漁師の角度』 竹谷 隆之

旧版!旧版が図書館にあったよおおおお!
表紙はまるで硬派な写真集みたいな布張り装丁で、中をペラペラめくってもルポ体の文章と、リアルな情景写真。
SF。
新版は 竹谷隆之『漁師の角度』第一話が、ネットで冒頭読めます。ネットだと印刷物より実物っぽく見える。でも、これじゃダメなの旧版なの。
http://www.moae.jp/comic/ryoushi?_ga=2.249211726.890517943.1498010825-1900729872.1498010825

核か何かで首都が全滅した少しだけ未来の日本の、北海道のとある村を舞台にした地域限定SF。超ローカルな潮と腐敗と土と血が臭うSF。アイヌのシャーマン、高齢の漁師、猟師、核で世界全滅したような気配漂わせるわけありの多人種が集い、突然変異したクリーチャー、アイヌ神話の魔物が跋扈する。
造形物と小説で造られた世界で、造形物のほうが比重が大きい。この世と地続きで、ほんとうにそこにある世界。

以前実物を展覧会で見る機会があったのですが、やっぱり写真だと情報量が減るもんだなと。でも、大判のクリアな写真で、絵になる1枚として見られていい物でした。ほんとうにこの世界に実物が存在するリアルと、この世をそのまま写したのではなく作家の手からなる造形で、誰かの夢のように雄弁な風景。

長らくの絶版高価本の増補改訂版が写真加工が多くて造形を見たい読者のニーズに合わず、旧版が更に高額になってしまったという…新版は話の追加されてますが、バーンと見開きや1枚の大きな写真で造形が見られるのは旧版。まるで実際の風景をスナップしてきたような構成っていうのが、新版の編集。

図書館取り寄せで届いたら箱入り2分冊を別々に貸出してるようで、版権作品集ついてこなかったんで、こんど取り寄せようと思います。