『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』先崎 学

文章が上手。でも、おそらく最盛期ではないんでしょう。でも上手。十分以上に。それでも…

うつ病の特徴に単純に頭が悪くなる(記憶力の低下、判断力の低下…)っていう症状があるので、頭脳がプライドもアイデンティティも全ての根幹にあるだろう棋士が罹患するのは、本当に、本当に……どんどん辛くなる。肉体の病なんだよなあ。脳も臓器だし。

病や老いで違う生き方を強いられたときに、生き続けるには。

この方は、目指す回復の地点が元の立ち位置に近いものであるけど、だってそれは人生の全てがそこにあったんだから。栄光も友人も自負もすべてが。リハビリに将棋打つのを付き合ってくれた格下の棋士たちに敗北し絶望しそれでも付き合いがあって、また対戦して…人間の関係の話がすごくよかったと思います。+勝負の世界に戻るので、弱くて負けたら見向きもされない厳しさとが同時の人生で激しい。