『遊廓の産院から ---産婆50年、昭和を生き抜いて』井上 理津子著

産婆さんがしゃべってることは面白んだけど、作者の文章が変な志向ある。医者ディスりの助産院至高のバイアスなので、えええ〜産婆さんがしゃべってることは普通に面白いのになあ、という一冊。ここ削ったらもっといい本なんだけどっていうか、この作者序文のせいで人に勧めづらい。聞き書きのパートは普通に巧いので面白いです。この作者の後の作品は読んだことあって巧かったです。ルポは自分の言いたいことを人をダシにして言うことじゃないって、変わってくれたんでしょうか。

とは言いつつ、子供産んだら、子ども産むイベントの話読むのが面白くなったんで、エロそうなのと面白そうなんで借りました。遊郭だし。遊郭パートは冒頭のちょっとで、「〜から(スタートしました)」なんで釣られたわい。
遊郭の産院見習いから始めて、生涯8000人をとりあげた産婆人生の女一代記なので面白かったです。金もほしいし、自分の妊娠とも兼ね合いの現金な思考とか、関西の風だからなのかカネも込のお話で面白い。偏見なんですが、関西の人はお金の話する感覚違う。
っていうか、戦中でさえ妊娠したら配給増えるし、産む前に労働させたら切迫早産になるしそのままにしちゃったら普通に流産するし、産んだすぐ後の人間の女は物理的に動けない、とかやってるじゃんよ。なんでこのあたり今でも風当たり強いんだろうか…と思いました。もー

戦中話は、堪えるものありました。赤ん坊一人が鉄砲玉一個、兵隊になるのに20年もかかるのにそんなに戦争を続ける気なのか…とか、空襲で取り上げた赤ん坊を抱いたまま焼死した産婆の話とか、泣く泣く託して動けないお母さんは赤ん坊も抱けずに死んだし、殉職した産婆も、死ぬために生まれたような赤ん坊もみんなかわいそうだと。