『堤清二 罪と業 最後の「告白」』児玉 博

西武百貨店からセゾングループ、リプロポートを通じて一つの文化を作った経済人にして、作家辻井喬の顔を持つ堤清二へインタビューしたルポ。文春掲載。表紙家族写真の目もと涼しい少年の、晩年へのインタビュー。
政治に経済に文壇にアメリカに右翼に共産主義に、ものすごくこのあたりゴチャゴチャしてて、立場ごとに語られない方向を重ねつつ理解するしかないっていうかんじの領域なんだけど、インタビュアーと構成が補ってくれて一冊で補完できる。協力なのか反対なのか二元論じゃないんですよね当事者だから人間同士だから。
三島由紀夫の制服が西武百貨店製だってのは有名な話ですが、突入当日に堤清二が、三島の父親からあんたがあんなもん作るから死ななくちゃならなくなったんだっていう言葉とか… 当事者の言葉で、こんな現実があるのかと。

大きいというか矛盾というか強さというか、昔の人間って単純に年をとってたから老獪ってことじゃなくて、もう昭和の人間には何やってもかなわないなと、この手の昭和史読むと思います。