『結晶世界』J・G・バラード

「ほとんど純文学」という評判。
らい病院に勤める主人公が、ある理由で病院を去った女医を追い僻地へ。現地では何故か厳戒態勢がしかれていて、植物の伝染病とも、物理学者が調査に来ているとも・・・。
らい病者特有の外見に表れる症状と、美しく結晶化して静止していくジャングル、鉱山町とのダブルイメージが、美妙な味わいです。狂ったような病んだイメージと、外見の美醜が、結晶化の謎に迫るにつれて意味が反転し、主人公の医師自身の秘密も秘密ではなくなっていく、この展開はすげー。映画になったらすごそう。
イデアだけじゃなくて、本一冊として完成度が高かったんで、面白かったです。


アメリカの娯楽だと、らい病が出てくることはタブーじゃないのかも。『信ぜざる者コブナント』っていうファンタジー小説でも、主人公はらい病を宣告され心理的にも生活も行き詰まって絶望、現実逃避の先の異世界では健康が回復していく・・・という、いろいろときっつい設定でした。娯楽じゃないっての。
異世界に召還されて魔王を倒して世界を救う」という話があんなキツかったのは、コブナントだけです。