『プレイヤー・ピアノ』カート・ヴォネガット

これはいま現実の状況を書いた本ではなく、これから起こるかもしれない状況を書いた本である。登場人物のモデルは、まだ生まれていない人びと、あるいはおそらく、これを書いている現在、まだ赤ん坊である人びとに仰いだ。

まえがきから

50年前に想像されたディストピア
機械化が進んで仕事がなくなりベーシックインカムで暮らす人たちと、その技術管理者がエリートとされる階級社会。AIとかまさに今ダヨコレ〜
ワードの抜き書きするだけで、だいたい今問題になっている点そのまんまになります。解決方法はありません!(ネタバレ)

「さあ、はっきりとはわかりませんけど。でも、第一次と第二次の革命も、それより前の時代には考えられないことだったんでしょう?」
「機械にとってかわられる人びとにとっては、たぶんそうだったんだろう。第三次革命ね。ある意味では、その革命はもうしばらく前からはじまってるのかもしれんな。つまり、それが思考機械を意味するならさ。たぶん、第三次革命はそれだよ―人間の思考の価値をなくする機械。(中略)
「最後の段階をこの目で見届けるほど長生きしたくない感じだな(後略)
p32

「そして、機械よりもいい仕事ができないため自立していけない人間は、政府に雇われて、軍隊か、でなければ道路住宅補修点検部隊にはいるのです。」
p42

機械にとってかわられなかった人間もいる(中略)機械にかえてもあまり経済的ではない分野で働いているだけのことなのだ。
p52

素晴らしい新世界』みたいなイギリス人の階級絶望極まった激烈ディストピアじゃなくて、ゆるみがアメリカらしいぬるめディストピア物。ジャンル物の定形の範疇かな。初期の作品なので、ヴォネガットどれか一冊読むっていうなら『タイタンの妖女』とか『スローターハウス5』とか他の勧めます。私のように全部読みたいとかディストピアが読みたいとか趣味じゃなければ読まなくても。