「Vampire Hunter」 creatan create版と三年物語版

公演終了してかなり経ったので、感想。
大学生のときに、劇団creatan createのVampire Hunterにヤバいくらいハマって、春休みバイトで貯めた金を全部使って見られるだけ見てました。何でそんなにハマってたのか、今思い返してもどうしてそういうハマり方したのか。
そういうわけで、まじで青春の1ページにあたるこの作品が、再演されるとはまさかそんな、気が動転して3枚もチケットとっちゃったということも、過去になった今、ちょっと考えてみました。


同じ話をやったように見えて、実は全然違う話。同じなのは、最初のルキソルトゥスの導入とその末路くらいです。
例えば、吸血鬼の王女様は、旧版では永遠に成長しないこと憂いていた本物の吸血鬼、新版では吸血鬼として育てられた人間。
その母、ノワルーナも、旧版ではウェスペルテリオーに吸血鬼にされて何一つ自由のなかった無力な存在、新版ではウェスペルテリオーを吸血鬼にしたものの約束を裏切られてもなお愛しているからこその死を願う弱くも力ある女。
アラビア風の暗殺者も、旧版では男女のペアで、吸血鬼アウデンティアに殺された恋人の仇を狙いつつ、その女と瓜二つなサンクティオの娘と恋に落ちたりしてました。新版の女性二人組み暗殺者もいいキャラではあったけど、娘の仇を軸に親父サンクティオとラストでペアを組む前作よりもちょっと関係性が薄目。流浪の吸血鬼アウデンィアは、旧版では、ウェスペルテリオーの追放された息子でした。そんなわけで、役は全然違いました。

役者によって話を振り当てるという方法だそうで、役者さんにあったキャラありきで作られたんでしょう。登場人物は、ヴァンパイア物のお約束な耽美設定てんこもりで、そういう雰囲気だけ楽しむにはとても面白かったんですが、濃密なキャラの絡まりは、「家族」という雰囲気でくくられた前作には及ばないように思いました。
そう、どーしてハマっちまったのか、考えてみたら、私は前作を「家族」というフィルターにかけて誤読していたのです。コンセプトは同じ「吸血鬼アクション」それだけなんだから家族モノだと思ってしまったのは誤読以外の何物でもない。で、家族物にしては陳腐この上ないんだけど、吸血鬼でそれやられると、文字通り血の絆でつながった一族の崩壊の話に、誤読してしまいえらく面白かったんですよ・・・


記憶は美化されている。そして私は年をとりましたし、何より違うキャスト違う劇団による再演。だから、再演は決して悪いものではなかったのです。殺陣はずっと洗練されていたし、音楽にもあってた。キャラクターになりきった役者もよかった。でも、それでも、私の中限定伝説の舞台Vampire Hunterは、記憶の中の土砂降りの中のテントにしかなかったのでした。
時間は流れて、二度と返らない。それだけでも観た甲斐はありましたし、楽しい時間だったのもまた事実。今は昔に返らない、今楽しいことは今しか楽しくしないんだなぁ。