『地下鉄のザジ』レーモン・クノー

ザジは「おけつブー」が口癖の女の子の名前。旧訳は「ケツくらえ」だそうで。
なんかの文学ベスト30みたいなリストに上がってた本の読んだことあるやつは面白かったんで、趣味似てるかなと思って読んでないやつを借りてみました。

ロリBBA好きというか、規範から解き放たれた小賢しい少女にニセの全能を見る性癖の男にはたまらない一品。あるよね。『ロリータ』みたいな。ハルヒみたいな。海がきこえるみたいな、あの手の女のコ。
そういう女の子にのみ許された傍若無人。ニセの全権全能を振りかざしている道化を楽しみ、権力をはがす瞬間を楽しめる男ではなく、私通ってきた道の女性として見てしまうので前半のアマゾンレビュー曰くの「楽しいところ」からして最初っから痛快とは無縁で痛々しく感じてしまったもんでした…。

トラブルメーカーで大人を手玉にとる前半、中盤に二人の男の言い争いに全く無視されたときの不安とへつらいを転換に、後半は時間的に眠かったり(子供だからね!)してほとんど登場しなくなる構成。だって、ザジは本当に小さな女の子でその口から出ることはニセモノのウソだってことは読者も登場人物もみんなわかってるんだけど、出てきた大人たちの語りのウソや騙りやモヤモヤしたところにうつろっていく。

普通の小説じゃなくて、言外の所作だけでできているような進行と、書いてあることがすべてみたいなメタっぽいテキストも併せ持ってて、確かに変わった文学ではありました。でも意地が悪すぎて楽しみきれないなあ。