空飛ぶゆうれい船

昔の日本のアニメって、ディズニーアニメほどには今の時代にも通用するかっていったら手放しにそうも言えなくて、それのためなら全部我慢できる、みたいな動機が無いと見るのが辛いものもあります。白蛇伝わんぱく王子の大蛇退治も、リッチな絵とかわいいキャラデザがとにかく魅力的ですが、ちょっとしたアラや、演出上退屈だったり目をつぶりたいところもあります。
で、この「空飛ぶゆうれい船」は、絵の印象はあんまりよくありませんでした。しかし、とにかくスゴイスゴイと有名な作品なんでどんなもんかといつか見たい作品でした。
アマゾンプライムでタダで見られるゾーヤッター

・演出がスゴイ
演出が冒険しまくりで大人。人物のお芝居を丁寧に描いたり、情景描写として海底基地のガラス張りの床にふわりと浮かび上がる帽子で殺害を暗示したり、ストーリーを演出する技術がすごい。ってか、冒頭のホラー演出は本気で怖すぎてすごい。ワッとびっくりさせるような単純なものじゃなくて、時間の駆け引きが怖い。子供は大丈夫だったんだろうか。
3D映画のように、観客の目を楽しませるための、ジェットコースター視点の気持ち悪くなるようなスピード感の映像もあって、映像への意識が高い。怪物の描写も、血が出るとかそういう直接的なものじゃなくて、情景で表現してて怖すぎる。

・作画がスゴイ
おまえ宮崎駿だろうっていう砲弾のやたら凝った弾道や、戦車の絵、ピンポイントで作画がスゴイ。
スタッフに参加してるってのは知ってたんですが、調べたらここがマジで宮崎駿でした。http://www.style.fm/as/05_column/animesama15.shtml
最後の海面のアニメーションも素晴らしい動き。すげえなあ。

・話の設定がスゴイ
これねえ。太陽の王子ホルスにも通じるとこあると思うんですが、ストレートに社会批判する内容です。時代の空気が私にはわかりませんが、009で衝撃を受けたような戦争/大企業/国家の癒着の現実の問題を扱って、メタファーで解説してくれる。恐い話です。怪談ではなく、社会が怖い話。
話の運びは甘いんですが、これを問題として描こう、描いちゃったってのがすごい。

というわけで、すごい作品でした。絵が…と思ってたんですが、これが動くと大変魅力的だったので、絵でつまづいてる人にはおすすめ。