変身物語

去年の日記から再録。提出期限の迫った読書感想文に苦しむ学生にぜひ役立ててもらいたい。

『変身物語』 オイディウス(前43−後18)著

変身をモチーフにしたギリシャ・ロ−マ神話で織り成されている詩編ラテン語の語り口をみごとに移し変えた散文訳だそうですよ。
友達が読んでたから読んでみました。
しかし、オタクが読むとこうなってしまうという日記。くだらないので、テストとレポートと就活に苦しむ人は読まないが吉。


・・・数ある話の中の一遍「サルマキス」
昔々、サルマキスという泉の精がいました。ディアナ神に従う男勝りのニンフが多い中、とっても乙女らしい思考の妖精さんでした。そこに、15歳の美少年が通りかかります。

とたんに彼を自分のものにしたいと思ったのも、たまたま花摘みの最中でした。

乙女サルマキスは放送禁止用語並の甘い言葉で少年を誘惑します。

少年の顔が赤くなります。愛とはどういうものかそれを知ってはいなかったからです。でも赤くなったということが、かえって彼の美しさを増しています。

埒が明かないので、とうとう実力行使に妖精さんは出ます。

妖精は、せめて姉妹の接吻でもと、際限なく迫りながら、早くも、少年の白いうなじに手をまわそうとしているのです。
その彼女に、『やめてったら!』と少年は言います。

で、妖精さんは『どうそお好きなように、坊ちゃん!』と言いつつ、あっさり去っていきますが、諦めていませんでした。

少年のほうは、当然ながら、草原にはもう誰もいず、人に見られていないというつもりで、あちらこちらへ歩みを運び、やがて、ひたひたと寄せる泉の中へつま先を、それから足をくるぶしまで浸すのでした。とおもうと、猶予をおかず、こころよい水の冷たさに心奪われて、たおやかな体から衣服を脱ぎ捨てました。

そう、少年の逃げていた妖精さんは、泉の精でした。

するとどうでしょう。なんともこのましいその姿!サルマキスは、その裸身に焦がれて、燃え立ったのです。妖精の両の目も爛々と光ります。

えらいことになりました。

少年は手のひらで体を叩くと、さっと水にとびこみました。(中略)まるで、透明なガラスの箱に入れられた象牙の彫像か、白百合の花であるかのようです。
『わたしの勝ちよ!とうとう手に入れたわ』
水の精はそう叫びます。そして衣服をかなぐり捨てるとざぶんと水中に飛び込みました。あらがう相手をつかまえ、無理じいに接吻を奪うと、手を下へ回して、強引に胸に触り、前後左右から少年に抱きつきます。

『変身物語』は岩○文庫赤ラベル収載の古典文学です。

ついには必至にさからって逃れようとする相手に蛇のように巻きつくのです。(中略)あるいは、きづたが大きな木の幹にからんでいるありさまとでも、またヒドラの類が海中でとらえた敵を触手でつかまえているさまとでもいえばいえるでしょうか。

この後、妖精さんは坊ちゃんを逃がさないために、合体してしまいます。姿の変わった坊ちゃんは・・・

手をさしのべながら、もう男らしさを失った声でいいました。
『(前略)この泉に浴した者はみんな、そこを出るときには男女となっていますように!この水み触れるやいなや、体が柔らかくなってしまいますように!』
両親は心をうたれ、男女と変わった息子の言葉を聞き入れて、不浄の魔力をこの泉に与えたのです。

おしまい。

オタクの読後感想文は「お姉さん触手攻めショタ&フ○ナリ」という、読者を物凄く限定しそうな18禁マンガ用語(?)に集約されるのでした。
この本普通に岩○文庫なんですが。
格調高い文章で触手なんて、しかもエロい触手なんてのが綴られているのを読む日が来るとは思ってもみませんでした。他にも、男の子として育てられた女の子が、いざ結婚と言う時に、色々困ってしまうのだけど、現実問題よりなにより「私は女の子なのに女の子を愛してしまっているよ、どうしよう」とか、萌え所でした。
まじめに読んでた友達ごめん。
ギリシャローマ神話基本知識を手軽に読めるので普通にオススメなのですが、オタクにもたいそうオススメな本です。
夏の読書感想文にいかがですか。(無責任)