『アジアの岸辺』トマス・M.ディッシュ 浅倉 久志 訳

小説の技法っぽいのを駆使した短編集。『歌の翼』みたいにSFよりもこれも文学寄り。確かな筆なので、すんごい突飛なオチとか、SFの飛躍も、味付け程度でそれ以上に小説が面白い。世界を疑って変革する主人公じゃなくて、自分の不確かさが根底にあって、主人公自体を読者が最初から確信を持てないのを、短い文章の中でゆらいだり寄せたり返したり面白い。