『チェンジ・ザ・ネーム』アンナ・カヴァン

書かれる人物は女たち。主人公は抑圧的な家庭に育った小説家志望の女。めっちゃモテモテでお約束フィルターでもかかってるような雰囲気あるので、メロドラマなのかな?と思わなくもない事の運びと、不穏ないろいろなレベルの表現が混ざっててそれが意図的なのかコントロール不能なのか判断できない不安定さ。完成度が低い??自伝?とにかく何もかもにも信頼性がなくて、個々の狂気っぽい描写のパーツは天然の狂気と不安がにじみでてる感あるところは面白かったです。メロドラマなのに、愛の不在や、自身に生きる力のないことで他人から吸い取ることでしか幸福になれない、その虚ろさ空しさで愛そのものについては書かれてないのが印象的。閉じて底のある小品なので、ジャンル小説っぽい印象受けたのかもしれないです。でも不安定過ぎてジャンル小説の安心感は皆無。

元々の読みたい動機が、今年復刊された伝説の終末小説という触れ込みの『氷』を読みたいけどなかなか手に取れないので、すぐ借りれる本をということでした。これ自体がものすごくいい本だという感想ではないんですが、作者が何かしら狂気と不穏を抱えてるのは間違いなさそうに思えるので、ディストピア小説のほうには期待大。作家性を読む作家さんなのかな。