『ひとが生まれる―五人の日本人の肖像』鶴見 俊輔

中高生向けの本だろうか。やさしい言葉です。明治から戦争中までの有名な人からそう有名でない人、無名の人、5人の生涯と、なぜそのような生き方をしたのか、語りかけながら教えてくれる。優劣ではない生き方の多様と、よく生きること、幸福、考えるきっかけになる本。人生半ばの私が読んでも大変ためになりました。いろんな人生あるもんなあ。一行の余談で出てきた人で、「家をなさずに死んだ。」とか公民権運動に身を捧げて、周りの人だって客観的には不幸だけど、不遇の人生はそれでも価値があると。

最初に、体制によらない人生を生きたジョン万次郎、そして反抗して戦った田中正造ときて、戦わなかった人…と、正しさや主流に疑問を持たせて…っていう構成も、まさしく戦中派で権力不信の世代だからだろうなあと。この5人を通じて書かれる明治からWW2までの日本の国家権力の成立の歴史を描いている本でもありまして、よくできてる面白い本でした。