『ナインストーリーズ』J・D・サリンジャー 柴田元幸訳

大人と子供が会話をする9つの短編。どちらも確固とした人格を持ち、子供は大人が薄まった未完成な存在ではないし、大人は子供のまま続くピュアさを垣間見せるけれど子供ではない… 現代読者である私は、暴力とロリコン野郎の心配を捨てきれずに読み終わってしまったけど、次はピュアにもう一度読みたい… すごくピュアでした。
出てくる大人上限がだいたい30代、子供いても小さな年の子しかいないっていうくらいだから、子供にも大人にもどの登場人物にも共感してかき乱される。男の子の損われることが前提のピュアさに、女の子が受け入れる理不尽や悲しさ…と大人になった男と女。往還する輪。
短編ってのがいいんだな。大人と子供の境界には死という絶対の断絶がある厳しさなのに、あまりにも切ない優しい世界で、すごくよかったです。訳違いで他にも読みたい。