『ラッセンとは何だったのか』原田 裕規

余りにも金欲しくて郊外ショッピングセンターでラッセン展のチラシ配りバイトした私にはこの本を読む興味と資格がありまぁーす!
ラッセン展入場無料券渡す基準はショッピングセンターに来る層の中で金持ってそうな人とファミリーです。子供は動物キャラ好きだから買って買ってのワンチャン。酷。あれ子供は好きなんですよ。

公共のバイトあっせん所に行ったら、このバイトしかなくてよう。金!
この本に書かれてる荒稼ぎと、美術界のお客さんじゃないラッセン愛好層である大衆のヤンキー(安っぽい趣味から逃れられない田舎物)に、ラッセン… みたいな私が金銭欠如っていう反面で関わったってのがなんとも皮肉です。稼いだ金でアメトイとソフビ買ってたから、すごくお金を下に流してたよね。

比べるのも不遜だけど、田中一村なんかそのエキゾチズムと南国の魚や鳥が描いてあるという、そんな大衆性で好きってとこも私の感じ方としてものすごくある。その作家のあり方は極貧なんで真逆なんですのが、わかり易さと極楽感で、すごく飾りやすい絵だと思いますよ。

ラッセンをみんな無視してるけど、要はアールビバンの押し売り商品だからでしょ、他の理由は金稼いでるだから?自己模倣的だから?イラストレーション?でもそんなの現代美術だって持ってる側面なんで、客かなあ客違うのはなんでかなあ…とアートの受容について理屈をこねくり回す本で、一歩筆致を変えれば抱腹絶倒系。まじめに引用する豊富な図版がすでに繰り返しのギャグの様相を呈してくる。
不真面目な本じゃなくて、ラッセンそのものの歴史が日本が主なマーケットということで、バブルの都市文化のアールビバンギャラリーからバブル崩壊後は地方でラッセン展という郊外文化になるって社会論みたいだし、アニメとかオタクとか領域侵犯してるのにラッセンだけ無視ってなんでっていう拡張で成り立つ現代アートについて自己批判の体裁は美術評論で、ラッセン以外の美術ってじゃあ何よっていう話なので面白かったです。

冒頭のアールビバンバイトに戻るんだけど、ヒマだったのか責任者のおじさんが説教してくれてウザかった「いい絵だから売るんじゃなくて、買ってよかったとていう思いを売る」みたいなことは、今思えばラッセン絵画の真理だったのかもしれません。