『田紳有楽・空気頭』藤枝静男

私小説に徹し〜みたいな裏表紙の解説流し読みして、地味そうだと思ってなかなか開けなかったんだけど地味〜〜〜〜なザ・日本文学みたいな出だしから、ニトロ爆発、ぐい呑(陶器)と金魚♀のラブラブセックス(一人称陶器)にはびっくりしたね。そこで終わらず第二エンジン点火して宇宙へ―! みたいなとんでもない展開するので、ネタバレはしません。
なんだこれwwwなんだこれwww
と現代語では大草原不可避な、面白案件でもあり深いような。だって昨日読んだ『青白い炎』ナボコフのファウンテンとマウンテンの解が時代とジャンル超えて書いてあるんだけど。

―さて、このへんで長々と記してきた身の上話を終わるとしよう。あれからかれこれ十六年、せまい池中に身を潜めてあたりを仔細に観察し、こし方ゆく末に想いを馳せていると、人間は万事色と慾、思い込みと騙しあい、転生も永世も嘘のつきっこ意外の何ものでもないと見つけたのである。従って衆生済度の成否の眼目は、これを説得する嘘のなかにしかないのである。(後略)
66p

↑これは茶碗の一人称です。(金魚ックスしたぐい呑みとは別の焼き物の一人称)

面白かったです。近い雰囲気は、水木しげると筒井康孝足して水で割っておいしくしたかんじでしょうか。かといって軽佻浮薄昭和ネアカなかんじでもなくて、さらさら読みやすい文章で口当たりは軽いんだけど、とんでもない出来事がサラーッと書いてあって目がすべる。読んだことが信じられない。こういうのに賞ちゃんとあげてるんだから、日本文学は懐深かったんだねえ。
空気頭のほうは、病妻モノ〜と思わせておいて、やっぱり逸脱がありました。ただ、田紳有楽みたいな明るさはなく狂気と罪悪感とに暗いおかしみ。解説がこれまた時代がかかったのついてきたんだけど、田新有楽のほうをすべて良いもの、と言っていたのは、そうだよなあと。よきかなよきかな。