ゼノギアス 20周年コンサート

2018/4/7夜回に行きました。2000人キャパ劇場×4公演なのに、チケット入手が大変難しくてネット騒然、20年前のプレステのRPGの作曲者プロデュースコンサート。お値段も8800円〜と、オーケストラフル編成でもそうそう無いくらい高額だったんですが、友人とチケット作戦会議してて、20年前の100万本近く売れたゲームで、今みんな金持ってる30半ばだったらヤバいだろってので、複数当たったらいさぎよく複数行けばよしと、最大口まで申し込んで運よく1つ当たって参加することができました。相当運が良くて2,3年分運使い切ったかもしれない。


オーケストラ編成+リズムトラック+ギター+ベース+ピアノ
ここまではゲーム音楽再現だとわりとあるかんじの編成なんですが、そこにゼノギアス民族音楽特有の、
ケルティックハープ+ケルティックのリード各種+アコーディオン
極めつけが宗教的なテイストがある音楽のために
・本場アイルランド古楽再現合唱団 ANUNA(Uはウムラウト
そしてテーマ音楽を20年前に歌発注した
ケルトの歌姫ジョアンヌ・ホッグ

20年前の歌手ですよ。生身の人間の20年だぜ…どうやって揃えたんだって言う奇跡の大編成で、8800円は当然ってか安い、ものすごいコンサートでした。伝説になるでしょう。

とにかくすごかったのが合唱。今も耳で聞いたものが信じられない。ゼノギアスといえばブルガリアンボイスも印象的なんですが、それとも違う、野性味のか生々しい声や、宗教音楽のように透明な器楽と化したり、それが一糸乱れず集合した男女の混声で表現されるので、とんでもない合唱。
人間国宝とコラボで来日とか、そういうステージの企画で来る団体なのに、たかがゲームのやっつけ仕事じゃなくて、このステージにちゃんと関わってくれてて、演出してくれることにまず驚愕でした。後ろに一列に並んで歌うわけじゃなくて、ステージ上でオペラのように男女を意味する掛け合いやってくれたり、半円のステージをゆったり曼荼羅のように動くマスゲーム状の演出や、回転する舞台での配置もあいまってものすごい陶酔感。物語をコンテクストに持つ、ゲーム音楽の一つの究極でした。
ゼノギアスは物語の中で宗教や信仰心が描かれますが、和製RPGの文脈ではわりと信仰心は否定されがちな風潮を、個人を確立するものの一つとして、かなりまじめに描こうとしてる作品だったと思います。で、本場の宗教音楽の人たちでやるんだもん。ものすごい拡張が顕現しました。

会場が独特で、擂鉢型の半円形のステージを、一体にする照明がものすごくて、宗教音楽やってるときは、ほぼ宗教っていうか全体主義の儀式で、ヤバイくらいの集団の高揚が感じられて、これやってもいいのかっていうレベルでした。
ともし火を持った合唱団のメンバーが劇場上部から、ゆっくりステージに歩み降りていって、最高潮で集合する。集合する歌声。
回転する舞台から照射される光で、合唱団のメンバーの影が大きく広がって会場の壁に、大きなゆったりとしたリズムで流れて……
私の席がステージ近くではなく、会場の上のほうだったので、照明演出が会場全体を巻き込むのが見えて本当にヤバかったです。空気が本当に変わる。一体感の渦ができるのが見える。みんな席について動きもしないのに。怖いくらいの体験でした。人間こうなる。これは場に参加してよかったなあ。

スクリーンに、曲によってはゲーム画面流してくれたりするんですが、これもね、20年という時の結晶作用で、壮大な音楽に対してチープ(といっても今見ても非常に綺麗な3D)な画面の恥ずかしさとか、もうそういうもんじゃないんですよ。ここに座ってる何千人が同じ場面見て同じ音楽聴いて涙してたとこなんだもん… みんな一人ずつで体験したことを、一体で感じるってマジ宗教でしたわ。映像だけじゃない演出が、ゲームを知り尽くしていて、つまりこの会場にいる人を知り尽くしていて、ものすごく揺さぶられました。もし映像見る機会があるなら、ネタバレがもったいないのでここでは書かないでおきます。

オケは、ステージなんだからなんの恥ずかしげも無くフルスロットル編曲で爽快。最初、スピーカー入るってわかったとき、ちょっとガッカリしたんですよ。でも、すさまじい音圧と、シンセトラックや合唱配分してるのに、ストレスを作らないという魔法のようなパーフェクト音響でした。なんでこれが聞こえるんだっていう粒立ちと、音圧が同居してて、こんな音響あるのか…。

そして、ジョアンヌ・ホッグ。歌が本当に美しくて、巧いとか昔の録音をコピーして歌うとかそんなので十分満足だったのに、歌を歌う人がここに立つ奇跡のような時間でした。生身の人間が歌ってる、すごい歌。
クラシカル、ジャージーだったりソウルフルとか、そういうジャンル音楽に分類できない。人間の人生のいいところ半分みたいな、20年という歳月なんですよ。しかも20年前日本のゲーム音楽の単発オファーですよ。そんな条件、自分らしくない仕事だったんじゃないかとか、英語歌詞も変だったんじゃないかとか、ゲーム音楽なんでアカデミックに優れているわけじゃない…とか、聞いてるほうが心配になってるところをこれでもかと。
生きてて良かった。


生きてて良かった。会場出るときほんとそう思いました。
物販列が地獄のように長くてパンフレット購入も諦めようと思ってたんですが、もうあんまりにも素晴らしくて並んじゃったよ。がんばった。客が多いので、物販、資料展示なんかキャパオーバーの気があって、目的がかなえられなかった方も多いと思うんですが、でも、でもこの音楽のステージに立ち会えたことが本当によかった、そんなコンサートでした。コンサートってかんじじゃないな、総合芸術ステージ。伝説だなあ。生きててこんなことあるなんてなあ。
4/30まで配信もあり、パッケージ化されるかもしれないとは思うんですが、これは、場に立ち会うことがとにかくすごい体験だったので、本当に参加できてよかったです。いやー…生きててよかった。