『オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史』 パトリック・マシアス著 町山智浩訳

アメリカのオタク受容を解説してくれる本。ファンとして黎明から渦中にありながら、編集者としてシーンを冷静に見下ろしてもいて、雑学にとどまらず文化論みたいなとこまでいく面白い本でした。翻訳も、オタク特有のルサンチマンを内に秘めるヒネくれた一人称っぽくしてあっていいかんじ。2006年くらいまでの話。面白かったんで+10年の今の話もあれば読みたいなあ。

最近、私20年前のアニメの少女革命ウテナに青春カムバックしてて、これがまたアメリカで大人気なもんだからアニメリカっていう雑誌だけにハロウィン書下ろしがあったり海外だけのインタビューとか資料散逸してるんで検索しておりました。受容がやっぱチョット違うんだな。何とはいえないけど、確かに違って…そんなこともあり、訳者さんも有名だし読んでみよっかなと。

ギークは情報化社会の犠牲者、メディア漬けの産物かもしれない。僕らは映画やテレビ番組やマンガが誘発する脳内麻薬の中毒なんだ。子供の頃に味わったあのハイな快感がもう一度欲しくて、いつまでも同じことを繰り返しているだけなんだ。
11p

欠かせないスクールカーストの話から入って、ヒエラルキー上位のジョックスやクイーンの卒業後の世界での行き詰まり、ギークとナードの違いって、ギークは勉強できて興味は現実にあって、今や億万長者で世界をよくしてくれる存在になったけど、ナードは別に勉強もできないし、現実逃避するだけのその先が日本のサブカルチャーだったらオタクっていう。
オタク趣味が、アメリカ社会にどんだけ異質のファンタジーだったか、日本人には全然想像つかない視点を当事者ならではの経験と編集者の冷静さで説明してくれる日米の文化論でもあり、単純にどんな作品がウケたのかの受容の様子を詳細にっていう歴史だけでも超面白かったです。ガンダムWしか無いとか、初代ウルトラマンを20年間放送とか面白すぎる。
で、オタクもアーティストのクールな側面から、これしかできない社会不適合者までいろいろ紹介してくれて、持ち上げ過ぎるでもなくけなすでもなく… オタクという人種についての本にもなってて、我が身を省みて痛し痒し。今春、1999年のアニメにしか興味なくて2018年の春が吹っ飛んでたもん私…