『死ぬ瞬間の子供たち』エリザベス・ロス・キューブラー

タイトルがゾッとしますが、別に原題は子供って入ってない、中身もそれだけじゃなくて、前著より具体的なケース毎についての本。まだスピリチュアルじゃなかったです。
医療従事者は医療を志すくらいだから、そもそもの個人の資質として死と戦うほどの強い死への嫌悪があり、奮戦の敗北の末の死には、感情ともども巻き込まれてダメージを受ける、無感動になるといったような話は、考えたことのない視点でした。患者とその家族は、正解と完璧、そして願いを叶えてくれること(究極的には死の回避)を医療従事者に求めてしまうけれど。どちらへも無批判に、でも互いを理解することが助けになるように、あるがままのケースが書かれています。子供が死病を抱える家族について、実際問題、病院のために父母が別居せざるをえなかったり、いっしょに時を過ごせないことで問題が起きるとか。
何が起きるのか、どう変わっていくのか、時間経過として事態と感情の動きを見ていくので、すごいドキュメンタリー本でもある。1981年と古い本で、この前に『セラピスト』なんか読んでたから絵画による精神分析はちょっと時代がかってる風ありました。訳文も古い。
訳者がこの本訳した直後に死んでるので、自身の死を見据えた手術直前に書いてる訳者あとがきも加えて重い。