小さなおうち

大叔母さんの遺品を整理する孫が、晩年の思い出と、自叙伝で書かれる娘時代に女中奉公した昭和の小さなおうちでのお話。昭和初期の中流家庭(といっても、たぶん大学卒で会社常務で、女学校出の奥様がいるけっこうお金持ち)の豊かで幸せな生活、と恋。

日本映画って、最近バブル時代の東宝映画とか、イカれてる角川映画ばっかり見てたんで、こじんまりでした。ありていに言えば低予算。この小さなおうちと玄関と、下宿の玄関しか出てこないセット感は、演出意図も感じます。昔を表現するときに、半端なキッチュ感ある。もっとセット寄りだと、途端にカルト映画になってしまいそう。
角川映画とかなら映像でバーンと出てきそうな、昭和な賑やかな銀座とか戦中っぽい情景が、セリフで語られるのみで、そこがまた家の中の人間だけを描くって意志感じるんでいいもんでした。

でも、映画的な進行状況説明セリフと、ふつうのセリフのバランスがそんなに完成度高いわけではないようにも感じます。ぎちぎちに構成された会話劇っていうもんでもない、戦中を描いても声高なメッセージ性も無いし、映像のケレンのカルト感も無い、無いということで日常がとにかく穏やかで幸せそうなんだよなあ。昭和リッチなセットを、ボーッとして何にも考えないで眺めるのがいい。
三角関係の恋の映画でもあるんですが、小さなおうちの中の旦那様、奥様、女中、小さな坊や、遊んでくれる会社のお兄さん、というものを若い二人はそれぞれに愛していたんでしょう。世が世なら共犯者になれたかもしれない。それでも、お互いにそれを壊す思いを抱えていたし、時が経てば、いずれは壊れていったのでしょうが、人が壊す前に、世の流れで壊れてしまったことの無情。