『賢い血』フラナリーオコナー

先に全短編を読んでいたので、これの習作になったであろうエピソードが比較できて興味深かったです。最初の列車のくだりなんか、短編版だと救いようもなく陰鬱だったのが、情報がよりそぎ落とされて、喜劇的な読み物の要素が濃い場面になってるんだけど、余計に筆が残酷。印象的な場面が、南米文学の魔術的な雰囲気とはまた違って、南部っぽい雰囲気というんでしょうか。衝動とか感情以前の情動での苦しみや、理屈を超えた圧倒的な救済感といい、古い本ですが文章の表現の果てをまた一つみた気分。