『中動態の世界 意志と責任の考古学』國分功一郎

「シリーズケアをひらく」のレーベル・・・ちくまorみすず書房or岩波新書で見るかんじの本。同じシリーズの六車由美さんの民俗学の本は、著者が民俗学者→現在介護職だから、介護職実録になってて、例えば利用者への声かけにトイレと言わずにその地方の方言のト…

『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』ジェフリー・ブラウン  富永晶子訳

今読むと面白いんじゃないかと思って買ったらさ…狙い通りでくやしいけどおもしろい・・・ リアル4才児かわいいし、不器用なパパもダースベイダーだからだから。育児漫画あるあるを、スターウォーズの親子で。ってことで仕込まれてる映画のオタク的ネタいろいろ…

『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』ブレイク・J・ハリス 仲達志訳

いかにもアメリカのライター本的な文体、つまりドキュメントを劇的にドラマ再現したニュージャーナリズム文体で書かれるので、面白おかしく飽きないこと絶対です。巧い。 セガ社長はサイコな狂人だし、だいたい出てくる人間は元気過ぎる有能ビジネスマンで、…

『焼肉大学』鄭 大聲

焼き肉大学読んでる間、焼き肉屋に行かない時間に抱えるストレスが凄まじいので、焼き肉食べられない状況の人間は絶対に読んではいけない。禁じる。昨今パワーワードっていう言葉をよく目にするようになりましたが、こんなに胃袋を直撃ジャブしてくる書名が…

『田紳有楽・空気頭』藤枝静男

私小説に徹し〜みたいな裏表紙の解説流し読みして、地味そうだと思ってなかなか開けなかったんだけど地味〜〜〜〜なザ・日本文学みたいな出だしから、ニトロ爆発、ぐい呑(陶器)と金魚♀のラブラブセックス(一人称陶器)にはびっくりしたね。そこで終わらず…

『abさんご』黒田 夏子

母と娘の緊張感に満ちた一生の関係を、子視点で書く中編。子供のみずみずしさと幼いがゆえの不器用さ、そして子供だった過去を振り返る自分の老いの両方を備えていて、豊かな読書体験でした。広い時空が緩やかに重層に、でもこの一つの世界でだけ流れるのを…

『21世紀の貨幣論』 フェリックス マーティン  遠藤真美訳

欲の皮が突っ張ってるよな自己啓発っぽいタイトルですが、まあ私も金が欲しくて読んだんですが、お金というシステムの歴史雑学本で、えらい面白かったです。 冒頭の面白い話、産物が食べ物と唯一のぜいたく品のナマコくらいっていうヤップ島で使われてた石の…

『メディア・モンスター:誰が「黒川紀章」を殺したのか?』曲沼美恵

恥ずかしながら、30代の私は黒川紀章という名前を知りませんでした。都知事選出馬も覚えてなかった。 メディアに露出がすごく多かった建築家の人だそうで、中銀カプセルタワービルは老朽化のネットニュースで知ってる…くらいの前知識。読み始めたら建築の戦…

『悪女について』有吉佐和子

昭和エンタメ小説でめっぽう読み易くて面白い。事故死が報じられた悪女について、インタビューに答える一人称連作で、悪女自身は最後まで出てこない。匠のエンタメで、露悪趣味からついつい読んじゃう…登場人物は男女年齢階級さまざま。 オホホホホのザーマ…

『ラッセンとは何だったのか』原田 裕規

余りにも金欲しくて郊外ショッピングセンターでラッセン展のチラシ配りバイトした私にはこの本を読む興味と資格がありまぁーす! ラッセン展入場無料券渡す基準はショッピングセンターに来る層の中で金持ってそうな人とファミリーです。子供は動物キャラ好き…

『青白い炎』ナボコフ 富士川義之訳

映画ブレードランナー2049で、人造人間の感情があるかテストするシーンで読み上げさせられる言葉は、この小説の引用だそうなんで読もうかなと思ってたんですが、岩波文庫の分厚いやつ(580p↑)って気合が必要なのでなかなか手がつかず、電車に104分×2ってい…

『凍』沢木耕太郎

氷壁に挑むクライマーのルポ。2015年の本で2005年の実話。筆力十分の余りに、辛くて苦しくて夢に出そうな苦しさ。 登山が、探検隊の流れを汲む大人数でベースキャンプを設営しながら前進して、最終キャンプからメンバー選別したアタック隊だけが頂上に挑むと…

『音楽入門』伊福部昭

鑑賞者のための音楽の歴史。律動、旋律、和声の中で、律動(リズム)が赤ん坊の興を引き、各地民族音楽に見られるもので、人間にとってもっとも早い音楽だけども、だからといって下等な音楽ではない、など、考えたことも無かった音楽について、薄いのにまる…

『河北新報のいちばん長い日』河北新報社

新聞屋という事件で飯食う職業の、それだけではない、もっと何か。人間の営みとして意味を見いだそうという葛藤。 大震災の後、結構文化人とかヒヨったりして文筆業のもろさみたいなの感じたことあったんですが、胸まで水が浸かって死にかけた記者が必死に出…

『知への賛歌』ソル・フアナ 旦 敬介訳

17世紀末セルバンテス後のスペイン文学最大の作家にして修道女。結婚せず一生好きな勉強して生きてくために、戦略的に尼になったそう。今までぜんぜん知らなかったのですけど、メキシコの紙幣になってるくらい有名作家だそうで。当時のメジャージャンルの難…

『堤清二 罪と業 最後の「告白」』児玉 博

西武百貨店からセゾングループ、リプロポートを通じて一つの文化を作った経済人にして、作家辻井喬の顔を持つ堤清二へインタビューしたルポ。文春掲載。表紙家族写真の目もと涼しい少年の、晩年へのインタビュー。 政治に経済に文壇にアメリカに右翼に共産主…

『ナインストーリーズ』J・D・サリンジャー 柴田元幸訳

大人と子供が会話をする9つの短編。どちらも確固とした人格を持ち、子供は大人が薄まった未完成な存在ではないし、大人は子供のまま続くピュアさを垣間見せるけれど子供ではない… 現代読者である私は、暴力とロリコン野郎の心配を捨てきれずに読み終わってし…

『アート オブ JC ライエンデッカー』

1920年代、アメリカの黄金時代のイラストレーター。 ニューイヤーベイビーとか、赤と白のサンタクロースとかフラッパーの絵とか、とにかくアメリカ。 複製しやすい絵を描くこと、誤解なくイメージを届けること、とか、自分の功績についてイラストレーターで…

『日本の名随筆 祈』石牟礼道子編

公害の認識が始まって、戦争も過去ではない、そんな1970年ころの文章を石牟礼道子が「祈り」をテーマに編んだっていう興味深い本でした。昭和の祈り。 軽〜いネアカなエッセイから、祈りが現われた物について民俗学的な観点や、戦争、故人への祈り、自分のキ…

『われらの子ども:米国における機会格差の拡大』ロバート・D・パットナム, 柴内 康文

アメリカのとある町の著者が子どもだった時の友達の人生と、今その町に住んでいる子どもの人生、豊富な事例の人生見本市で、町の姿の変遷と、時代、そこで生きる人生っていう下世話な興味も満たされながらの、膨大なデータで雄弁に時代を説明してくれる。 俯…

『とある魔術の電脳戦機(とあるまじゅつのバーチャロン)』鎌池和馬

本カテゴリにするか、ゲームカテゴリにするか結構迷うラノベ。 ビデオゲームを描いた小説が硬軟問わず大好きで結構読んでるんですけど、その中でも経緯が特殊かつ、丁寧に作られた良作と思います。・『とある魔術の〜:アニメ化した大ヒットラノベ 2004年〜…

『という思想 』 原武史

ハーンの出雲つながりで、新年なんでめでたそうなやつを。 出雲の話って、知ってるようで知らない伊勢と天皇をトップにしたメジャー神道がいかに成立したかという裏面でもあって、結構いろんなことが明治発。誰が作ったか個人名まで特定できちゃう。出雲につ…

『心: 個人完訳 小泉八雲コレクション』小泉 八雲, 平川 祐弘

新年最初はいい本が読みたい・・・。 とてもセンチメンタルな童話のような読み物と、ハーンの東洋文化論が一冊に『心』と題されて刊行されたもの。岩波文庫で読んだことあるんだけど、娯楽に近いような領域で読み返したい気持ちある。あの感情の揺れ動きをも…

『ハイ・ライズ』J・G・バラード, 村上 博基訳

最近映画になってたみたい… タワーマンション内で階級闘争(物理)からの人間性むきだし狂気の混沌群像劇なので、映画としては絶対面白くないわけはない。見たいなあ。 バラードは、WW2上海租界で日本軍の捕虜になってからの支配階級からアジア人に見下げさ…

『サンタクロースっているんでしょうか?』 フランシス・チャーチ 中村 妙子訳

アメリカの8歳の女の子の質問に、ニューヨーク・サン新聞の記者が応えた社説を絵本にしたもの。 アメリカの善いところの全部だなあ… アメリカが創造したプレゼントをたっぷりと持った物量によって幸福をもたらす神、でっぷり太った赤い服のサンタクロースが…

『家族 日本の名随筆 (別巻42)』 久世 光彦

中勘助の蜜蜂が読みたくて借りたんだけど、テーマ家族でしょっぱなから「桜桃」なあたりもうね… ちょっと昔の人が気になったりしてその著作検索すると結構な頻度で出てくるシリーズなんだけど、こんな何百冊も出てたとは知りませんでした。これすごくいい本…

『もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら まこと新たなる希望なり』イアン・ドースチャー  河合 祥一郎訳

スターウォーズだ… どこをどう見てもSW… そしてどう見てもシェイクスピア… 台本形式だし、挿絵も舞台をそれっぽい版画風で描いてて大真面目。爆笑の後に困惑する程度に出来がよいです。よくできてるなあ。面白かった。ときどき、宇宙を股にかける系のものす…

『完本 カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」』佐野 眞一

子供の時にはあった、スーパー ダイエーがどうやってできたかと、その終わり。すでにある巨大な常識みたいなシステムが、ほんの短時間で出来上がって、それがどれだけの変節を経たのか、興味深かったです。時間。 文化人類学や社会学の範疇では、と作中イン…

『女子プロレスラー小畑千代――闘う女の戦後史』秋山 訓子

昭和戦後史で、男の格闘技の本はどこか社会の裏面のドロドロとした暗さがあるのに、これはスカっと明るく爽やか大冒険でものすごく面白かったです。いい本だったなあ。最近読んでた昭和モノがいろいろ重なってまさに戦後史の読み応え。著者がピュアなまでに…

『深沢七郎コレクション 流』 (ちくま文庫) 深沢七郎

楢山節考は入ってないけど、代表作の小説。 「東北の神武たち」は、今村昌平監督映画に1エピソードとして入ってたやつだあ〜これがあんな映像になってたのかと。 ものすごい作品で、なんつうか日本の話なのに現代社会から隔絶した地の自然描写とエキゾチズム…