おれにはアメリカの歌声が聴こえる―草の葉(抄) (光文社古典新訳文庫) ホイットマン 飯野 友幸

薄い入門版の抄訳で光文社古典新訳文庫ありがとーう! 岩波文庫だと分厚いの3冊なんで、あの岩波のギチッとした小さい字の版組で分厚いの3冊だと今読む元気なくてさ。しかし、やたらめったらスーパー元気がでまくるすごい本だ。 詩+その解説で、最後に原文…

『アラバマ物語』ハーパー・リー, 菊池 重三郎

一番言いたいことは、すごく読み易かった面白い本だということです。名作名作と聞くんで、岩波文庫かなと思ってたんですが、予想外に暮しの手帖社刊。つまり、大衆向けのとても読み易い小説で、小難しいところは無い面白い60年代ベストセラー。時代感じるこ…

『別冊映画秘宝ブレードランナー究極読本&近未来SF映画の世界』

迷ってたんだけど買っちゃった… ISBNついてる商業誌なのに同人誌。こういう作者の労力を無視して、紙代にもなってなさそうな本は本当に金払う価値がある。ブレードランナーしか載ってないというか好きな人の執念と妄想しか載ってない。 映画本編のバリエーシ…

『死ぬことと生きることと』土門拳

タイトルが大仰でビッグネーム。 近年の再販版で、あとがきの人が微妙に無名で???だったけど、現代でこれ読むということについての話だったんで、たぶん出版当時と全然違う受容してました。昭和の文化人おじさんが文化人らしい本を出した、自身のスランプ…

『「伝える」ことと「伝わる」こと―中井久夫コレクション』中井久夫

人間についての本質。人間の根源。 すごい面白かった本なので、手元に置こうかなあ。精神科の医者、各国語を操る文学者として、現実の肉体と精神や空想の領域を自由に横断する視点ならではの、人間を構成する断片についてたくさんの事実と、そこから考察した…

『重い障害を生きるということ』 高谷 清

とても読み易い2011年の新書。 山のように本がある中で、クズ本も書き飛ばした本も仕事で作る本もあるじゃん。ジャンル関係なく題材がスゴイとか文章スゴイとかいろいろあるけど、ものすごい本だった。 障害の当事者ではなく、小児医療に戦後間もなくから携…

『社会にとって趣味とは何か 文化社会学の方法規準』北田 暁大, 解体研

社会学とは何か、が本筋で、社会学についての歴史的経緯に紙数多く割いてるんで1年生の教科書かと。その方法使って、オタクの受容史というか社会における位置解説してくという流れ。 オタクという用語が使われた媒体に当たって歴史的に拾ってくところとか豆…

『時代遅れの人間』ギュンター・アンダース 青木 隆嘉

前書きが超陰鬱。人類が滅びた後に、廃墟で拾う本みたいなこと書いてある。 人間の尊厳の観念を植え付けてくれた父の思い出に、 人間の後輩にかんする以下の痛ましい頁を捧げる。 iii この最終弁論を描いたのは、より人間的な世界が存続するためであり、もっ…

『喋る馬』バーナード・マラマッド 柴田元幸訳

柴田先生チョイスの短編集。一番有名な「魔法の樽」は外したんだと。ちぇっWW2間もないニューヨークのユダヤ人に、良心の呵責という形をとって訪れる現実が、神話や寓話に転換する。抒情と信仰を仲立ちとして成立する。瞬間ではなくて、そこからきっと永遠に…

『生命・人間・経済学 科学者の疑義』宇沢 弘文, 渡邊 格

今から40年前の経済学者と分子生物学者の対談。まるで昨日書かれたかのように、何にも解決してない!様々な問題を挙げて、じゃあこれは現行制度の社会システムや理論のほうに問題があるよねっていうスタンスの対談。 同じ社会が続いてるんだからそりゃ問題も…

『老人と子供の考古学』山田康弘

キャッチーなタイトルに釣られて。考古学の学問の定義から、著者専門の墓を中心とした考古学、その中から子供のケース、老人のケースのトピック立てなので、その話題をズバリピンポイントの本というよりも、考古学ってな〜に?の一般向けの啓蒙書といった体。…

『昆虫はすごい』丸山宗利

おもしろ博士本かと思って借りたけど、あんまり著者は前に出てこないで、面白昆虫ネタ満載の本。写真のキャプションに「著者を吸血しているところ」みたいなのは十分面白いけど。 急ぎ足の広く浅く紹介に止まれど、今のトレンドな話で子供の時にはまだ知らて…

『善意と悪意の英文学史 語り手は読者をどのように愛してきたか』阿部公彦

読んでると、すごい頭よくなったような気がしてくる。本という媒体の誕生時、小説というジャンルが成立する以前のベストセラーだった「マナー本」「礼節についての本」の流れを汲んで、小説は作者が読者に教えるという関係性を内在していること、その作者の…

『怒れ! 憤れ!』ステファン・エセル 村井 章子訳

檄文。短い本なんだけど凝った装丁でおしゃれ。元フランスのWW2の闘士にして、ナチの処刑を逃れ国連の人権宣言の起草に携わり…という現在90才のアジテート。日本人の怒り方と違う。恨みつらみの回復じゃなくて、正義を求める怒り。それは絶対に正しい、とい…

『幼い子のいる暮らし』毛利 子来

読者にやさしい。いいこというなあ。これが1982年、それより前世代の60s’の松田道雄読んだ後だったから、よその育児面白がりはあんまりなかったです。っていうか1回読んだことあるような。そんくらいサラッと読む感じ。

『私は赤ちゃん』松田 道雄

赤ちゃんの皮をかぶった産科医のしゃべくり芸、1960年の朝日新聞の連載をまとめた本。前読んだ『私は二歳』が読み物として面白かったので、こっちも読みたいなと。全ページに岩崎ちひろの挿絵が入っててすごくいい。記載自体は、この時代はこれやってたんだ…

『剣客商売』池波正太郎

1巻が置いてあったので読みました。3/4くらい。強い・金持ち・モテのチート主人公に降りかかる単発ラッキースケベイベントと、ゆるふわロリ女子と男装女剣士の三角関係で引っ張る引っ張る、1話完結の軽いミステリ… おいっ、これラノベじゃねえか!!! って…

『エロマンガ島の三人』長嶋有

中編と断片のような短編の短編集。文芸誌ではなくエンタメ系に連載された小説。ゲーム誌の企画でエロマンガ島でエロマンガを読むグラビアを、桃鉄にエロマンガ島が出てくるからスポンサーに… って実録じゃねーか!と思ったら、ファミ通のバカタール加藤氏の…

『猛スピードで母は/サイドカーに犬』長嶋 有

芥川賞受賞作。巧い。これは確かに誰か別の人の話だという距離と、読み進むと形造られる確かな共感とが独特で巧い。なのに、踏み込んでこないかんじが心地よい。この初期作品2編はどちらも受け身の状況に置かれた主人公であるんだけど、もどかしさは不思議に…

『幼い子の文学』瀬田 貞二

講演をまとめた物。ものすごく充実してて、言葉遊び、わらべうた、詩、物語、と幼い子の言葉の楽しみを体系的にまとめているので、すごい熱気の講演だったんだろうなあと思います。 何がいいって、やっぱりダメなもんはここがダメっていうこともしゃべるのが…

『「戦艦大和」の最期、それから 吉田満の戦後史 』千早 耿一郎

『「戦艦大和」の最期』が一次資料なんで、受容史も読みたいなと適当にタイトルで選びました。ごく近い人間によるインサイダーからの伝記にして、同じく帰還兵として当事者である著者の色も濃い。 復員した銀行員による社内の文芸同人誌の話とか、企業文化の…

『戦艦大和ノ最期』吉田満

講談社学芸文庫版。おそらく、その変遷と、受容をちょっとテキストから離れて見ることがいい年こいた立場には必要なんだろなって思うほど、一次資料。純粋に、テキストとしてものすごいテキスト。 個人の極限状態と、大きな状況の転回が重なって、この短い紙…

『流れる星は生きている』藤原てい

実は夫が結構な有名人で、お前かよ!!とお前呼ばわりしてしまうほど、子供3人を連れて引き揚げの極限状態の逃避行をする作者に感情移入していました。この、一番苦しいときに頼れなかった夫とは、その後離婚はしなかったとしても一生ダメだったろうなあと思…

『妊娠小説』斎藤 美奈子

妊娠が出てくる日本の文芸作品をだいたい「地位も名誉も(妻も)ある男が、年下の立場の弱い女を孕ませちゃって、とっても困って悩むんだけど、後でこんなことあったなあと安全に回想する」と喝破して抱腹絶倒。『舞姫』と『新生』のことなんだけど。その後…

『おもかげ復元師』笹原留似子

お涙ちょうだい枠で、ストレス解消に絶対泣けそうな本を読んでしまうタチの悪い悪癖が私にはあるのですが、ものすごい泣く。エンバーミング、死化粧をする納棺師のエッセイ。半分は東日本大震災の話で、悲しくないはずがない…。事実は小説よりも奇なりという…

『蜜のあわれ』室生犀星

最近青空文庫に入ったそうで話題だったので。 オシャレ。金魚さんとおじさまのオシャレなエロ会話。女に化けたり金魚生態らしさも誇示するある擬人化萌えする金魚。金魚とか異種間の生物的特性に萌えるのって、つまりは女の生物ぶりへの萌え。金魚が超エロく…

『イマジネーションの戦争 「戦争×文学 コレクション」』

「おれはミサイル」が読みたくて借りた、集英社の戦争アンソロジー20巻のうち1冊。『ゼロ年代SF傑作選』のほうにも入っててどっちでもよかったんだけど、こっちで。芥川龍之介から伊藤計画まで、空想の戦争。 世相ナイズした御伽話の芥川龍之介、戦争を知る…

『四人の交差点』トンミ キンヌネン 古市 真由美訳

フィンランドのベストセラー現代小説。共同体とは相いれない個人的な奇妙さを、否定肯定ないまぜで描いて、どうしても譲れない、捨てられない部分に伴う裏面は孤独という哀切を、淡々と描く。自我を扱う普遍的なドラマなんだけど、登場人物がいくら密接に暮…

『永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)』カント 中山元訳

大人になっても読んだことなかったんで。っていうか、これ若い時読んじゃうと、ありがたがってこれがゴールだと思ってしまったかもしれないんで、今でよかったかも。後の考え方にいろいろ影響与えたんだろうなあって読みました。今の世界理解ってID論とかキ…

『素晴らしいアメリカ野球』フィリップ ロス 中野 好夫 常盤 新平訳

大リーグ内幕のドキュメンタリー『マネーボール』と面白い野球の本枠でウロ覚えてて、小説のほう読んじゃった。小説だこれ。原題はグレートアメリカンノベル。偉大なるアメリカ小説、そう、これはアメリカを描いた偉大な小説。アメリカを描く表現としての野…